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インタビュー連載 難病ALSと戦う井上さんとnewmeの出会い 〜episode1〜

瞬間移動を可能にし、世界中どこでも、“新しい自分”を介してコミュニケーションや活動を可能にする。

そんなコンセプトを掲げてavatarin(アバターイン)が手がけるプロダクト“newme(ニューミー)”は、自分の意思で遠隔操作ができる自分の分身ロボット。例えば、水族館にあるnewmeを、自宅などの離れた場所からPCなどの端末を使って遠隔で操作すれば、自宅にいながら水族館の中を自由に動かしたり、現地の人と会話を楽しむことができます。

新しいコミュニケーションを生み出し、人々の生活を豊かにすることを目的として、現在も改良を重ねています。

 

“newme”はどのように活用できるのか?

また、不可能を可能にする新しいコミュニケーションツールには、一体どのような機能と進化が求められるのか? 

より多くの人に貢献できる機能を探るべく、“newme”を実際に使ってもらう、というプロジェクトが2021年1月にスタートしました。

 

本プロジェクトに協力してくださるのは、2017年に難病「筋萎縮性側索硬化症(以下:ALS)」を発症した井上浩一さん。

現在、進行を遅らせるための治療を行いながら生活を送る彼は、“newme”をどのように取り入れ、活用できるのか。

井上さんのインタビュー連載を通じて、“newme”の可能性や改善点をレポートしていきます。

 

連載1回目は、井上さんのご紹介から。ALSの症状に気づいたきっかけや、その症状、現在の生活の様子、そして“newme”を試用していただくまでの経緯を綴ります。

 

newmeと初めてのご対面

 


 

まずALSとは、全身の筋肉を動かし、かつ運動を司る神経“運動ニューロン”が障害を受け、筋肉が痩せていく病気。年に発症する人の数は10万人に当たり1~2.5人で、指定難病のひとつです。

その症状を井上さんが初めて感じたのは、2017年4月。忙しく働く日々の朝、突然、体にある異変が現れたそう。

「当時、僕はIHIという総合重工業メーカーに勤め、航空エンジン部品の営業を統括していました。会食が多かったので、運動のために毎朝、会社までの道のりの一部を歩いていたんですね。その日もまさに、いつもと同じルートを歩いていました。ふと、横断歩道の信号が点滅したので走ろうとしたとき、なぜか体が追い付かなかったんです。おかしいな、とは思ったのですが……疲れがたまっているのだろう、と、深く気にとめることはありませんでした」

 

「しかし、それを機に、違和感を感じることが何度かありまして。いろいろな整形外科の病院を訪ねてみたものの、原因はわからず仕舞い。結局1年ほど経ったとき、海外出張のためにシカゴの空港で乗り継ぎをした際、普通であれば10〜15分ほどの距離を歩くのに1時間近くかかってしまったのです。動く歩道に乗ることすら、ひどく恐ろしく感じまして。これはただ事ではない、と認識し、帰国後すぐに大学病院を訪れました。そこで初めてALSの疑いが判明し、2018年5月30日に確定診断が出ました」

 

「以前からネットで自分の症状を調べていて、“ALSなんじゃないか”と予想していたので。医者から“最低3年はもつかな”と確定診断を言われたときも、“まだ3年も時間があるのか”と感じました」

そして会社のサポートを受けながら、56歳までの1年7ヶ月間を働き続けた。

「僕は確定診断が出るまで仕事一筋の人生を送っていたので、仕事以外にすることも、したいこともありませんでした。退職するときには歩くどころか、手を動かすこともままならない状態まで進行していたので、多大なサポートをしてくれたIHIには本当に感謝しています」

 


 

「実際、会社を辞めてから、精神的にかなり落ちこみました。ひとりで移動ができない僕にとって、家族やヘルパーさん以外とのコミュニケーションツールはネットのみ。少しでも通信環境が乱れると、“誰かが僕を困らせるために妨害しているんじゃないか”と疑心暗鬼になったり、不安に陥ったり。仕事をしていると気にもならない日常の些細なことが、ものすごく重大に感じてしまうんですね」

 

「あとあと知ったことなのですが、幻覚症状や妄想は、薬の副作用による症状の一種でした。それらの学びや経験を経て、不安を感じたら一拍置いて考えるよう心がけたところ、徐々に精神が安定するようになりました。それと同時に、体の機能が低下していくなかでも、やりがいを感じる何かが必要なんだ!と実感。株式投資を行ったり、Facebookで自分のALS患者としての状況を発信ししたりするなどの生活を始めました。そんななか、かつて仕事で交流のあった方から、“newme”を使ってみないか?と声をかけていただいたんです」

 

家族の介護負担を軽減するため、現在は家からほど近いアパートを借り、ヘルパーのサポートを得ながらひとりで暮らしている井上さん。“newme”に見出したのは、コミュニケーションツールとしての機能だけではないと言う。

海外の人と会話しているときも、「まるで相手が自分の近くにいるような錯覚を体験する、一歩先のツール」だと感じたとか。

 

「“newme”の目的は、人々のコミュニケーションを豊かにすること。それが最終ゴールではありますが、その道のりに関与することで、これから後に続くALSなど難病患者の生き方の、ひとつの参考になれば良いと思っています」

 

「まずは“newme”の勝手を知るべく、なるべくたくさん使ってみるようにしています。Facebookで会話の相手を募ったところ、世界中の友人や知人が連絡をくださって。時差があるので、朝から晩まで、なかなか忙しいスケジュールをこなしているんですよ(笑)」

 

「モニタリングに協力してくださった方々のなかには、オンライン授業やオンライン受信に活用したいという友人もいました。彼らは、将来、avatarin社の潜在的な顧客になると考えています。実際に“newme”の購入につなげることが、僕がモニタリングに協力する、本当の意義だと思うんです」

 

次回以降は、井上さんが実際に使用して感じたことなどを、井上さんの日常とともにレポートします。

公開日などは、avatarinのSNSよりチェック!

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